フェーズ3:面接指導


 労働者のストレスチェック(検査)が終わってから、医師による面接指導、事業者による事後措置までのプロセスを説明します。

 常に、検査結果についての情報の保護を念頭に置くことがポイントです。
 特に面接指導の対象者については、周囲に知られないような通知方法、面接時間のやりくり、その前提となる職場の上長の理解など、工夫と配慮をもって接する必要があります。

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検査終了から事後措置までの流れ


ストレスチェック(検査)から事後措置にかけては、以下の期間を目安に進めます。

ストレスチェック(検査)実施

結果出力後、速やかに

(実施者が)本人に結果通知

概ね1カ月以内

本人から面接指導の申出

概ね1カ月以内

医師による面接指導の実施

概ね1カ月以内

(事業者が)医師から意見聴取

事後措置の実施
(事業者が必要に応じて就業上の措置を実施)

(厚労省マニュアル 印刷表記「-80-」ページから引用・編集)



面接指導の勧奨について


 ストレスチェック(検査)の結果、面接指導が必要でありながら自ら面接指導を申し出ない労働者については、実施者または事業者から、面接指導を受けるよう勧奨します。


面接指導の申出について


 労働者から面接指導を申し出る際にいくつかのパターンがあります。整理すると以下のとおりです(場合によってはいくつかのパターンが組み合わされる場合もあります)。

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医師による面接指導


 面接指導の目的は、医師に労働者のストレス状況を対面で直接確認してもらうこと、面接を通じてストレスとなっている職場内の要因を探ること、状況に合わせて保健指導や専門医の受診勧奨などを行ってもらうことです。

 労働者の状況を職場と結びつけて把握する必要があることから、面接指導を実施する医師には事業場のことを良く知るところの産業医、または事業場において産業保健活動に従事している医師が推奨されています。
 ストレスチェック制度における面接指導は精神疾患の診断や治療を行うものではなく、面接指導を行う医師は必ずしも精神科医や心療内科医である必要はないですが、メンタルヘルスについての知識や技術を持つことが望ましいとされています。

 面接指導の考え方や進め方については、厚労省マニュアルの「-70-」~「-77-」ページ(印刷表記)に記載されているほか、厚生労働省のWebサイトに面接指導を行う際に利用できるマニュアルやチェックリストが掲載されており、以下のサイトで閲覧できます。
面接マニュアル、チェックリスト等 »
(厚生労働省ホームページへリンク)

 事業者は面接指導を担当する医師と事前に協議し、上記の内容について情報を共有しておく必要があります。


医師からの意見聴取について


 事業者は、医師から面接の結果を踏まえた意見の聞き取りを行います。厚労省マニュアル(印刷表記「-78-」ページ)。  事前に、医師には面接の結果を報告書にまとめてもらいます。また、事業者が就業上の措置を講じることができるよう、意見書をまとめてもらいます。報告書、意見書とも提出されたものは事業者側で保存します。

 厚生労働省のWebサイトに報告書と意見書の様式が掲載されており、以下のサイトでダウンロードできます。
報告書・意見書フォーマット等 »
(厚生労働省ホームページへリンク)

 一方、厚労省マニュアルには、会社側の具体的に誰が医師から意見を聴取するのかについての記述が見当たりません(※)。医師の意見は「誰々がこういう状態なのでこういう措置を講ずる必要がある」という内容であり、個人情報も含まれています。会社側は就業上の措置を講ずる都合上、直属上司をはじめ人事権を持つ管理者も医師の意見を聞く必要があります。あらかじめ衛生委員会でも審議し、受検者(労働者)に周知しておく必要があります。
補 足
 厚生労働省所管の法人である独立行政法人 労働者健康福祉機構(http://www.rofuku.go.jp/)では「ストレスチェック制度サポートダイヤル」を設けており、ストレスチェック制度担当者等からのストレスチェック制度の実施方法、実施体制などに関する相談 を受け付けています(TEL:0570‐031050)。

 フェーズ1の実施体制のところで説明した「ストレスチェック制度担当者」(社内でストレスチェック制度の実務担当者)は原則としてストレスチェック結果等の個人情報を取り扱わないことになっていますが、同機構によれば、「ストレスチェック制度担当者」(実務担当者)は労働者からの面接指導の申出の受付や、医師からの意見聴取を行うことができるとされており、その際は守秘義務が生じるとされています。



事後措置について


 事業者は医師の意見を聴き、必要に応じて労働者に対し就業上の措置を講じます。
 具体的には、
  • 就業場所の変更
  • 作業の転換
  • 労働時間の短縮
  • 深夜業の回数の減少
などがあげられます。

 こうした措置を行うに当たっては、労働者の理解が得られるよう努め、不利益な取扱いを行わないこととされています。(厚労省マニュアル 印刷表記「-79-」ページ、「-100-」~「-101-」ページ)
 不利益な扱いに当たるのは、
  • 解雇する
  • 期間を定めて雇用される者について契約の更新をしない
  • 退職勧奨を行う
  • 不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じる
  • その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じる
などです。
 また、就業上の措置はあくまで医師による意見を考慮して行うものであり、労働者が面接指導を受けていない場合にストレスチェック結果だけを根拠に行ってはならないとされています。


 ひと口に「就業上の措置」といっても個々のケースにより内容は様々です。「作業の転換」や「労働時間の短縮」などがどのような文脈のなかで実行されるのかについては、過去の事例に目を通すことで実際のイメージを把握してください。厚労省マニュアルの印刷表記「-75-」ページから「-77-」ページに面談の事例とその後の経過措置についての事例が掲載されています。
補 足
 さらに事例をご覧になりたい場合、公益財団法人 産業医学振興財団 様(http://www.zsisz.or.jp/)のWebサイト内にある「中小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の進め方に関する研究」ページに掲載されているPDFファイル「中小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の進め方に関する調査研究報告書」に参考になる事例がいくつか見受けられます(直接リンクは設けていませんので、太字の文言を元に検索してください)。
 なお、長時間労働(過重労働)に伴う各種の取り組みについては今般のストレスチェック制度よりも先行して行われており、検索すれば参考となる事例を見つけることができると思われます。



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